2009年にソリダス・スネーク率いるテロリスト集団 「サンズ・オブ・リバティ」によって 海上除染施設「ビッグシェル」が占拠された大規模テロ事件。 テロリスト達は当日ビッグシェルを視察しに訪れていた アメリカ合衆国大統領ジェームズ・ジョンソンを人質にとり、 アメリカ政府に現金300億ドルの要求を突きつけたのであった。
この事態に米政府はハイテク特殊部隊FOXHOUNDの隊員雷電(ジャック)を ビッグシェルに送り込んだ。彼に与えられた任務は大統領の救出と、テロリストの武装解除。 雷電はまだ実戦経験のない若き兵士であったが、様々な困難に打ち勝ち、 ビッグシェルの中枢へと潜入していく。 やがて雷電は、任務を進める中で驚くべき人物と出会う。 その男は伝説の英雄ソリッド・スネーク。 スネークは2年前のタンカー沈没事件で死亡したとされていたが、 実は生きており、相棒のオタコンと共にビッグシェルへ潜入していたのだった。
スネークとオタコンは4年前のシャドーモセス島事件が 収束してから、共に反メタルギア財団「フィランソロピー」を設立し世界中のメタルギアを破壊して回っていた。 実はビッグシェルは海上除染施設などではなく、上部構造は偽装であり、 海面下にて巨大な新型メタルギア「アーセナルギア」が開発されていたのだった。
さらに雷電はこの事件を通して、ある巨大な組織の存在を知ることになる。 それは世界中の人間の無意識化で彼らの行動を操る、「愛国者達」と呼ばれる闇の組織。 この21世紀における多くの国家は、ほとんどの人間に気づかれることもなく、政治、経済、文化の流れに至るまで 愛国者達がその主導権を握っているというのだった。
ソリダス・スネークの真の目的は、この愛国者達を滅ぼすことであった。 実は彼らが政府に突きつけた要求は偽りであり、 テロそのものが愛国者達への宣戦布告であり、目的であったのだ。 新型のメタルギア「アーセナルギア」は、愛国者達が開発を進めていたものであり、これに搭載された 大規模AIプログラム「G.W.」により世界中の情報を検閲し、情報統制の基盤としようとしていたのである。 そもそもタンカー沈没事件自体が、この計画を実行するために仕組まれたものであった。 ソリダスは愛国者達に支配されない、 すべての人間が平等に、自由な言葉を遺すことのできる世界の実現を望んでいた。 彼はアーセナルギアを奪うことで、G.W.を手がかりとして 愛国者達の正体にたどり着き、抹殺しようとしていたのだった。
しかし、ソリダスの計画は失敗に終わる。 実はアーセナルギアの開発でさえ、愛国者達が用意したフェイクであり、 今回ソリダスが自分の意志で起こしたと思っているテロそのものが 彼らがスパイであるオセロットを使って起こさせた策略だったのだ。 愛国者達は各個人から膨大な情報が発信されるデジタル社会においても 自分たちに都合のいいように世界中の情報を淘汰できるように、 人間の意志をコントロールするシステム「S3」を考案した。 今回の事件は愛国者達がその効果を立証するための最終試験として仕組んだものであり、 タンカー沈没事件に始まる一連の出来事はそのためのステップに過ぎなかったのである (詳しくはS3計画を参照)。 そして、愛国者達が用意したワームクラスターによって暴走したアーセナルギアは ニューヨーク市街へと突入、フェデラルホールに衝突して機能を停止した。 公式軍の所有物であるアーセナルギアにより市街地が大きく破壊されたことに対しては すぐさま一般市民やメディアから批判の声が上がったが、これがやがて 世界の軍事力が公式軍よりも民間軍事請負企業(PMC)に依存していくきっかけとなった。 つまりこの結末さえもPMCを普及するための愛国者達の策略だった可能性が高い。
この事件において、雷電もまた、記憶をいじられてビッグシェルへと送り込まれた愛国者達の手先であり、存在しない架空のFOXHOUND隊員であった (FOXHOUNDは4年前に解体されていた)。 しかし、今回の事件で雷電が選ばれたことには理由があった。 実はソリダスはかつて雷電の両親を殺害して誘拐し、少年兵として育て上げた仇だった。 彼らの関係はまさに、かつてのビッグボスとソリッド・スネークに酷似しており、演習のモデルとして最適だったのである。 雷電とソリダスはフェデラルホールの屋上で、お互いの存在をかけた戦いを繰り広げた。これが彼らの最後の役割だった。 そして、死闘の末、雷電はソリダスを殺害した。 かつてスネークがザンジバーランド騒乱でそうしたように、 雷電も、親であり仇でもあるこの男を倒さなくては過去を精算することはできなかったのである。
今回の事件で、雷電は愛国者達に踊らされただけであった。 さらに雷電の頭には、愛国者達の仕業でもなく、自らの手で封じ込めていたおぞましい少年時代の記憶が蘇っていた。 しかし、事件が収束した時、彼にはそれらを乗り越える決意ができていた。 雷電は共に戦った伝説の英雄ソリッド・スネークの姿を見ていた。 今回の事件で雷電は自分から何かを選択することはなかったが、 かつてソリッド・スネークがシャドーモセス島事件で グレイ・フォックスから学んだように、 雷電はスネークから「自分の意志で生きること」を学んだのである。 雷電にとってはこれがスタート地点であり、やがて自分の意志に従った戦いに身を投じていくことになる。