OILIX(オイリックス)は、メタルギアの正史シリーズに登場する、高純度の石油を精製する微生物(微細藻類)。 チェコの科学者”キオ・マルフ”によって発明された。 学名は『ボツリオコッカス・オズマ・ブラウニー』。 1990年代の後半に中央アジアに誕生した武装要塞国家『ザンジバーランド』は このOILIXを独占すべくマルフを誘拐し、 これが後に言う『ザンジバーランド騒乱』が発生する一因となった。 登場作品は同事件が描かれる『メタルギア2 ソリッド・スネーク(1990年発売/以下、MG2)』。
OILIXに関してゲーム本編で明かされる情報は少ない。 本ページの情報は主にMG2のユーザーズマニュアル(MSX2版同梱品)、 および『メタルギアソリッド4 データベース(2008年配信)』の内容に基づいている。
バイオテクノロジーを専門とするチェコの科学者”キオ・マルフ”は、 バイオマス(生物資源)による農薬改革計画における研究に取り組む中で偶然、 原油にあたる”炭化水素”を生産する微生物、後の”OILIX(オイリックス)”の原型を発見。 これに改良を重ねたものが1999年の『プラハ世界エネルギー大会』で初めて発表され、世界中の脚光を浴びた。 なおその発明過程について、植物プランクトンの一種である単細胞藻類『ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)』を遺伝子操作することで 良質の液状炭化水素を多量に生産する能力を獲得させるに至ったという情報も語られている。 前者のマルフが発見した”原型”と 後者における遺伝子操作の元となった”藻類”の時系列的な前後関係は明確化されていないが、 恐らく先述の『農薬改革計画における研究』の一環として『ボツリオコッカス・ブラウニーの遺伝子操作』が行われていたのだと思われる。 ちなみに、ボツリオコッカス・ブラウニーは現実にも存在し2022年現在も研究途上となっている、 光合成によって炭化水素を生成する微生物である。
このOILIXが生まれた背景には、1980年代から危惧されていたエネルギー(主に石油)の枯渇問題がある。 発電手段としては太陽光発電、波力発電、海洋温度差発電、さらには高速増殖炉、核融合炉の開発が進められ、 発電源としての石油の依存度は減少していったが、交通機関の燃料源としての依存度は依然として高かった。 そんな中、石油に代わる新燃料として『自動車メタノール』、『サンドオイル』、『シェールオイル(油母けつ岩)』、 『バイオマスによる石油精製』が候補として挙がり、 特に化石燃料に頼らない人工的な石油の生産、『微生物による原油精製』は有望視された。 その開発において科学者に課せられた課題は『精製純度』、『精製量』、『コスト』の3点であるが、 OILIXはそれらの課題を見事にクリアした(詳細は後項『性能/培養』を参照)。 発表後、世界各国の大手石油メーカーがOILIXの精製契約に名乗りをあげ、 先進国だけでなくアフリカなどの発展途上国におけるエネルギー対策の一つとしても期待された。
なお、このOILIXを巡って1999年の『ザンジバーランド騒乱』が発生した (詳しくは後項『劇中での扱い』を参照のこと)。 エネルギー危機の解決に希望が見いだされた矢先に 武装要塞国家『ザンジバーランド』によるOILIXの独占という危機が発生したが、 やがて米陸軍の特殊部隊FOXHOUNDのエージェント”ソリッド・スネーク”により事態は鎮圧され、 OILIXの技術情報も無事回収されている。 その後、OILIXの存在が世界にどのような影響を与えたかについては、劇中で語られていない。
OILIXは、その藻1kgあたりから0.8kgの原油を抽出することができる。 その原油からは約70%のガソリンと、25%の航空燃料を得られる。 ガソリンはオクタン価(耐ノッキング性能)が96であり、いわゆる”ハイオク”に相当する性能を持つ。
さらに低コストで大量のOILIXを生産するための培養技術も確立されており、 石油代替エネルギーとして高い期待を集めることとなった。 『温暖』、『乾燥』、『日照時間が多い』という3つの条件を満たしていれば水の少ない地域でも培養が可能であり、 1ヘクタールあたり1日に85kgの石油を収穫することができる。 この培養技術の改良も、発明者であるキオ・マルフの手によって成し遂げられている。
ちなみに、中央アジアの小国『ザンジバーランド』は その国土のほとんどが乾燥地帯であり、さらに高温で日照量が年間を通じて多いため、OILIXの培養には最適と言える。 これが、1999年の『ザンジバーランド騒乱(詳しくは後項『劇中での扱い』を参照のこと)』の際に 同国がOILIXに目をつけた一因であると思われる。
舞台は1999年。後に『ザンジバーランド騒乱』と呼ばれる事件が描かれる。 90年代の後半に中央アジアに誕生した武装要塞国家『ザンジバーランド』は 世界各地の廃棄用核兵器貯蔵庫を襲撃することで核武装を遂げ、 さらにエネルギー資源の面でも軍事的優位を確立するために 高純度の石油を精製する微生物”OILIX(オイリックス)”の独占を図る。 当時、OILIXの開発者であるチェコの科学者”キオ・マルフ”は アメリカで開催される『国際エネルギー問題大会』に出席すべく渡米途中であったが、 ザンジバーランドはその道中を狙って彼を拉致、要塞へと軟禁したのであった。 これを受け、米国は陸軍の特殊部隊FOXHOUNDによる マルフ救出作戦『OPERATION INTRUDE F014』を始動。 すでにFOXHOUNDを除隊していた 元隊員”ソリッド・スネーク(本作のプレイヤーキャラクター)”が呼び戻され、 彼はザンジバーランドへの単独潜入ミッションに挑むこととなる。
要塞にて、スネーク=プレイヤーは かつて『アウターヘブン蜂起』で出会った 科学者”ペトロヴィッチ・マッドナー”と再会。 彼のサポートを受けて任務を進めるが、 やがてマッドナーが ザンジバーランドの統括者”ビッグボス”に従って動いていた ”二重スパイ”であったことが判明する。 スネークがマルフのもとへたどり着いた時には、 彼はすでにマッドナーの手によって殺害された後だった。 マッドナーはOILIXの技術情報を得るためにマルフを拷問したが、 マルフは最期まで口を割らず、やがて命を落としてしまったのだった。
任務の末にスネークは、 マルフが最期まで守り抜いた、 OILIXの技術情報が収められたという『カートリッジ』を無事回収、帰還する。 それはマルフが生前に愛したゲームハード”MSX”のカートリッジであり、 マルフはその中に技術情報を記録した”マイクロフィルム”を隠していたのだった。 持ち帰ったカートリッジをMSXハードに差し起動してみると、 起動画面における”VRAM容量”表示部分に『VRAM:01K bytes』と表示され 逆から読むと『KIO MARV(キオ・マルフ)』となるという仕掛けが施されており、 これが確かにマルフの遺したものであることが示された。 スネークはこれを『マルフ博士の最期のパフォーマンス』と評した。
MG2と同じく小島秀夫監督作品である ゲーム『スナッチャー(SNATCHER/1988年発売)』のパソコン(PC-8800シリーズ)版では 『オズマ・スデオ』という名前が数箇所で登場する (公式情報ではないが、辞書サイトWikipediaを参照)。 また、旧小島プロダクションの公式ブログで配信されていたネットラジオ(通称”ヒデラジ”)の 第295回、第296回にて小島氏が、スナッチャーのパソコン版開発時に 『スデオ・シード』というプレイヤー名でプレイしていたことを語っている (プレイヤーキャラクターの標準名は『ギリアン・シード』)。 そのため、『オズマ・スデオ』は小島氏の名前(『コジマ・ヒデオ』)をもじったワードである可能性が高く、 OILIXの『オズマ』もそれが由来であると推測される。 ちなみに、先述の公式ブログはすでに閉鎖しているが、2022年現在もWebアーカイブにて該当の放送を聴くことができる (第295回、 第296回)。